仕事で酸を扱う人の中に、歯が融ける酸蝕症にかかる傷害あります。塩酸、硝酸や硫酸などの酸性物質です。虫歯(齲歯、うし)とは違って、酸蝕症はエナメル質より深く、象牙質や歯髄までも歯を融かし、歯が著しく摩耗してしまいます。

職業性の歯の酸蝕症の特徴は、痛みなどの自覚症状が少ない、勤続年数の長い人に多い、歯髄に及ぶと治療は困難であり、前歯の唇面に生じるなどであります。法定健診としては歯科特殊健診が定められていますが、通常の定期健康診断には含まれていないため、見落としや重症化も少なくありません。

歯科特殊健診は、塩酸、硝酸、硫酸、フッ化水素や欧倫などの有害な酸を扱う業務に常時従事する労働者対象であり、対照有害物の取扱量の多少にかかわらず実施しなくてはならない(50万円以下の罰金)。「常時従事する」とは、「継続して当該業務に従事する」のいみであるが、「一定期間ごとに継続的に行われる業務であっても、時間や頻度が少なくてもそれが定期的に反復される」場合は該当する点に留意してください。歯科特殊健診の判定は「異常なし」、「要精検」及び「要措置」の三段階で判定されます。さらに、就業区分が「通常勤務」、「就業制限」及び「要求業」の三段階で区分されます。

現場の課題としては以下のようなことが考えられます。「歯科特殊健診が合法的に実施されているか」、「歯の酸蝕症が、安全衛生委員会や職員への講話で周知されているか」、「作業主任者が選定されているか(特化則127条)」、「作業指示書が掲示されているか」、「局所排気装置が設置されているか」、や「保護具の使用が日常化しているか」などであります。

特殊歯科検診は、地区検査センターに相談すれば対処してくれまあす。また、奈良県歯科医師会に相談すれば出張健診(10名までは約5万円+約4千円/追加1名)にも応じてくれます。こんな歯になるのは防がねばなりません。

奈良県歯科医師会のホームページ
https://www.nashikai.or.jp/

歯の酸蝕症健診
https://www.nashikai.or.jp/hm/itumo_e.html