Medical Tribune社によれば、神戸中央市民病院脳神経内科部長の川本未知先生は、「COVID-19の神経症状は、特に重症患者においては重要な後遺症の一つである。」と、
第61回日本神経学会で報告しています。その内容を簡単にまとめます。

令和2年3月から5月の新型コロナウィルス感染者で、同病院に入院した患者を重症患者(酸素吸入5L/min以上が必要)と非重症患者に分けて、それぞれの神経症状の後遺症を検討しています。

入院時の症状の比較によれば、発熱や咳などは重症者と非重症者とも高率にみられましたが、両者間で差がみられたのは意識障害と四肢筋力低下の症状で、いずれの症状とも重症者で有意に高率であったということです。

一方、後遺症の観点からみると、重症者では高次機能障害、意識障害、脳神経系の麻痺や四肢筋力低下など、総じて約4割に神経学的な後遺症が遺残していたということです。なお、新型コロナウィルスが神経障害を起こす機序としては、ウィルスによる直接の障害作用、あるいはウィルス感染で惹起される炎症による障害作用などいくつかの可能性が考えられていますが、その詳細は現時点では不明であります。

重症者におけるこういった後遺症が退院後の社会復帰の障害になっている可能性が高いと川本先生は考察されていて、重症者における神経症状の早期発見と見逃しの防止について注意を喚起しておられます。