この冬におけるインフルエンザとCOVID-19の同時流行の予測がなされています。

インフルエンザについては、人類はそれに対処する方法をすでに備えているともいえる一方で、COVID-19については無症状者の感染力の強さ、ワクチンがなく、治療薬が開発されていない状況、さらにインフルエンザに比べて高い致死率(インフルエンザの0.1%以下に対してCOVID-19は3~4%)と高い重症化率という特徴を考えると、COVID-19流行の危険度が高い。同時に、二つの感染症の症状が似ていて紛らわしいことから、COVID-19がインフルエンザと同時流行的に人類を襲うことがあれば、その混乱は火を見るより明らかです。

自分が発熱してしんどくなった時のことを想像してみていただければ、その混乱ぶりは明らかです。患者さん本人の混乱というよりは、それを治療する主体である医療機関の混乱といった方が正しいのかもしれません。

この冬発熱したら、皆さんはインフルエンザとCOVID-19どちらの検査を受けたいですか。インフルエンザかCOVID-19のどちらかを強く疑う状況があれば、まず、そちらの検査を優先して受けるのが一般的かと思います。結果が陽性であればその治療に専念することになります。陰性であれば、一方の感染症の検査に移るという手順になるかと思われます。ただ、当初からインフルエンザかCOVID-19のどちらともいえない状況であれば、二つの感染症の検査を同時並行的にしなければならないことになります。検査のすすめかたについては、それぞれの医師の間でも、関係する学会の間でも考え方がそれぞれにあり、検査方法も刻一刻と進歩していて、今のところ統一的な基準はないものと把握しています。いずれにしても、インフルエンザとCOVID-19の検査を同時並行的に行うことは、PCR検査によるのか抗原検査によるのか、あるいは、サンプリング検体を咽頭拭い液にするのか唾液にするのかなど、現場での混乱は想像以上になるものと考えられます。この冬、こういった混乱が一気に日本中で起これば、大変ことになるだろうことはさらに明々白々であります。

これからはまったくの私見でありますが、こういった混乱を少しでも小さくする手段の一つは、インフルエンザワクチンの摂取を老若男女問わずできるだけ多くの人々に受けていただくことだと考えます。その目的は、インフルエンザによる発熱を可能な限り少なくすることにあります。インフルエンザワクチンの接種を受けても、インフルエンザに罹る人が一定数いることは周知の事実でありますが、一方で、集団におけるインフルエンザワクチンの摂取率が高い程、その集団におけるインフルエンザ感染率が明らかに低いことも周知の事実です。ということは、集団におけるインフルエンザワクチンの摂取率を上げてインフルエンザによる発熱者を少なくできれば、発熱者外来を受診する人の数が減り発熱者外来の現場における混乱を緩和できることが予測されます。この冬は、多くの人にインフルエンザワクチンの摂取を受けていただくことを推奨します。インフルエンザワクチンの接種を受けて、発熱の原因を一つでも少なくするよう努めてはいかがでしょうか。