厚生労働省は令和元年度の精神障害に関する労災事案の集計を6月26日に公表しました。

精神障害の労災請求件数は全部で2060件あり、昨年より240件増えていた。うち自殺については202件で、2件の増でした。

精神障害の業種別の請求件数でみると、医療・福祉関係で426件と最も多く、製造業が352件、卸売・小売業が279件と次いでいた。業種別での傾向は前年度と大きな変化はありませんでした。

精神障害の年齢別請求件数をみると、40~49歳で639件、30~39歳で509件、20~29歳で432件と次いでいます。これらの年齢層で全体の7割以上を占めていて、まさに働き盛りと言える年齢層での発生が目立っています。

精神障害の時間外労働時間別の支給決定件数でみると、20時間未満で最も多く(68件)次いで100~120時間が63件、120~140時間が45件と次いでいます。時間外労働が少ない枠で精神障害についての支給決定件数が多かったのは、精神障害における影響が勤務時間の減少という形で顕在化していた可能性があります。一方で、長時間労働になっている多くの労働者が精神障害になっている状況は従来と変わらず、長時間労働の弊害が明らかです。

精神障害の就労形態別の支給決定件数では、正規従業員が圧倒的に多く(1304件/1586件中)、次いでパート・アルバイト(130件)、契約社員(87件)、派遣労働者(48件)、その他(17件)の順です。

精神障害の出来事別の決定件数では、上司とのトラブルが294件、嫌がらせやいじめが174件と多く、仕事の質の変化や量の変化などの節目による精神障害が207件などです。従来から言われているように、精神障害の発生が、人間関係のこじれや時間外労働時間の増加を原因として発生していることが明らかです。

精神障害の都道府県別請求件数を見てみると、東京都が最も多く363件、次いで大阪府の214件、神奈川の198件となっています。ちなみに、奈良県は19件でした。

今回の発表内容からは、精神障害による労災事案の集計結果の全般的な傾向については、総じて前年と大きく変化したところはなかったと言えますが、その請求件数においては、前年度から240件の増で、ここ数年間の増加傾向には歯止めがかかっていません。