ある統計によれば、世界中でそれによって殺される人間の数の多い順にみた生き物のランキングは、蚊が第一位、人間が第二位、毒蛇が第三位、次いでイヌ、ツェツェバエの順であります。なんと、毒蛇は第三位で、我々人間にとっては怖い生き物です。
日本の九州以北に棲息する毒蛇と言えば、ヤマカガシとマムシです。ヤマカガシの見た目の特徴は首の周り(頭の尻尾寄り)の黄色い輪、赤黒の斑紋など、マムシの特徴は丸に点の模様、短胴短尾、三角頭などです。
一般に、毒性はLD50値で表す。LD50とは、マウスに注射した際にそのうちの50%が死ぬときの投与量を表したもので、数字が小さい程毒性が強いことになります。ヤマカガシのLD50は5(㎍/20g体重)、マムシのLD50は31です。ヤマカガシの毒のほうが毒性は強いことになります。一般にはマムシ咬傷のほうが致死率は高いことが知られていますが、それはマムシが毒腺を圧迫する筋肉を有しているため、一回の咬傷で人間の体内に注入される毒の量が多いからです。ヤマカガシは安全かというとそうではなく、間が悪く大量の毒が人間の体内に注入されれば危ないと言えます。
咬まれた時の現場における対応は、まず咬傷部から頭に近いところを指が一本入るくらいに軽く縛ります(ゴム紐などの用意が必要)。これは毒が体に回るのを止めるためです。次に、毒吸引器(市販されている)で咬傷部から体液を吸引します。この際、口での吸引は禁物で、口内の傷や歯根から毒が吸収される危険性が言われています。
マムシに関する研究では、咬まれた後、早く病院についたヒト(20分以内)程、ゆっくり安静を保ってから病院についたヒト(80分以上)より、腫れの程度や持続日数が軽度で、入院日数も短かったと報告されています。咬まれた後は、安静保持よりもいち早く病院へ行くことが大切です。
マムシ咬傷の季節性の観点からは、市立加西病院の報告によると、7月、8月、9月に入院者が多いとあります。蛇の活動性が上がる夏に注意しましょう。
普段から、ヤマカガシやマムシの抗毒素血清を保持している病院を調べておくことが大切です。また、咬まれた直後の手当方法・道具や搬送方法などをマニュアル化して、共有していくことが大切です。