定期健康診断の必要性は、事業主の安全配慮義務(労働契約法)に基づくもので、健康面の安全に関する義務であります。

その目的は、
①業務との関連で健康に仕事を続けることができるか
②業務上の健康障害の有無や予防に供する
③自発的な健康づくりの指標にする
ところにあります。
これらの観点からは、定期健康診断が行われることにもまして、その結果を本人のみならず事業者が評価、共有し活用することが大切であります。

定期健康診断の結果を踏まえた事後措置にはその内容の重度によって3段階あります。
通常勤務可⇒就業制限(労働時間調整や出張制限など)⇒要休業の三つの就業区分措置がこれにあたります。

検査結果には健康に関わる多くの基本的な情報が含まれます。どの情報も健康に関しては大切なものでありますが、私が、産業医として強く注目する項目は血圧であります。高血圧の人はリスクが大きいと言えます。
血管への負荷増大により、狭心症や心筋梗塞という急性の心筋壊死が、脳内出血や脳梗塞という急性脳血管障害が発症し、その場で致命的になることもあります。高血圧を放置している方には、内科受診を強く推奨します。
一方で、慢性的な疾患と言えば、糖尿病、脂質代謝異常、肝機能障害、腎機能障害があり、胃カメラ検査や大腸ファイバー検査での異常や胸部X線撮影での異常所見もチェックが必要です。

また、健康診断を2回受けなければならない人がいます。それは、深夜業をする人や坑内作業をする人などで、6か月ごとに1回の頻度で健康診断が必要となります。

安全には、「物理的な安全」と「精神的な安全」と「健康面での安全」があります。
その中で、定期健康診断は、健康面での安全を評価する要と言えます。